派遣社員の雇用で失敗しないための重要ポイント【派遣法・指揮命令系統のルールを徹底解説】

「派遣社員を雇ったけど、何から手をつければいいんだろう…」そんな不安を抱えていませんか。
初めて派遣社員を受け入れるとき、法律のルールや実務上の注意点など、分からないことが多くて戸惑いますよね。
しかし、基本的なポイントさえ押さえておけば、派遣社員は企業の大きな戦力になってくれます。
この記事では、派遣社員を雇う際に最低限知っておくべき法律の知識と、円滑な関係を築くための指揮命令系統のルールについて、分かりやすく解説します。

目次

そもそも派遣社員とはどんな働き方?

派遣社員という働き方は、少し特殊な仕組みになっています。
例えるなら、あなたが「料理のプロ(派遣会社)」に「今日の夕食(業務)」の助っ人を頼むようなものです。
あなたは料理のプロに「カレーを作ってほしい」と依頼しますが、実際にカレーを作るのはプロが連れてきた「料理人(派遣社員)」です。
このとき、あなたは料理人に「もっと野菜を大きく切って」といった具体的な指示を出せますが、料理人のお給料を支払うのは、あなたではなく料理のプロ(派遣会社)です。
つまり、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で業務の指示を受けて働く、という関係になっています。
この「雇用主」と「指揮命令者」が異なる点が、正社員やアルバイトとの大きな違いです。

派遣社員を雇う前に知っておきたい「労働者派遣法」の基本

派遣社員を受け入れる上で、必ず理解しておかなければならないのが「労働者派遣法」です。
この法律は、派遣社員が安心して働けるように、また、派遣という働き方が適切に運用されるように作られたルールブックのようなものです。
特に企業側が注意すべき重要なポイントがいくつかあります。

派遣受け入れ期間の制限(3年ルール)

同じ事業所で派遣社員を受け入れられる期間は、原則として最長3年までと決められています。
これは、派遣社員の立場が不安定にならないようにするためのルールです。
ただし、いくつかの例外や、期間を延長するための手続きも存在します。

同一労働同一賃金

同じ仕事をしているのであれば、派遣社員であっても、派遣先の正社員と同じレベルの待遇(給与や福利厚生など)をしなければならない、というルールです。
これにより、不合理な待遇差をなくし、派遣社員が公正に評価されることを目指しています。

派遣が禁止されている業務

法律によって、派遣社員に任せることができない業務が定められています。
例えば、建設現場での作業や、警備の仕事、弁護士や税理士といった「士業」の専門的な業務などがこれにあたります。
自社の業務が該当しないか、事前に確認が必要です。

【重要】派遣と請負の違いは「指揮命令」にあり!偽装請負に注意

派遣と似た働き方に「請負(業務委託)」がありますが、この2つは法律上、明確に区別されています。
その最も大きな違いが「指揮命令権がどこにあるか」です。
この違いを理解しないと、知らないうちに法律違反である「偽装請負」の状態に陥ってしまう危険性があります。

派遣と請負の決定的な違い

ケーキ屋さんの例で考えてみましょう。

  • 派遣の場合
    あなたが「料理人(派遣社員)」を家に呼び、「このレシピで、この手順でカレーを作って」とあなたが直接指示を出します。
    これが「派遣」で、あなたは料理人に指揮命令をすることができます。
  • 請負の場合
    あなたがケーキ屋さんに「誕生日ケーキを一つ作ってください」とお店に注文します。
    どんなケーキをどうやって作るかは、全てケーキ屋さんのパティシエが判断し、あなたは作り方に口出ししません。
    これが「請負」で、あなたは仕事の完成を求めるだけで、指揮命令はできません。

このように、誰が業務の指示を出すのかが、派遣と請負を分ける決定的なポイントです。

項目派遣請負(業務委託)
指揮命令権派遣先企業にある請負会社にある
契約の目的労働力の提供仕事の完成
報酬の対象働いた時間完成した成果物

知らないと怖い「偽装請負」とは?

偽装請負とは、契約書の上では「請負契約」となっているにもかかわらず、実態は「派遣」と同じように、発注元の企業が労働者に直接指示を出している違法な状態を指します。
これは、派遣法の期間制限や社会保険料の負担といったルールから逃れるために悪用されるケースが多く、労働者の権利が守られない大きな問題となります。

もし、請負契約を結んでいる会社のスタッフに対して、自社の社員のように業務の指示を出したり、出退勤の管理をしたりすると、それは偽装請負とみなされます。
偽装請負が発覚した場合、企業には厳しい罰則が科されるだけでなく、その労働者を直接雇用する義務が生じる可能性もあります。

派遣契約における正しい指揮命令系統

派遣契約を正しく運用するためには、派遣先企業で「指揮命令者」と「派遣先責任者」の役割を明確にすることが重要です。

  • 指揮命令者 派遣社員に対して、日々の具体的な業務指示を出す担当者です。
  • 派遣先責任者 派遣契約に関する管理や、派遣会社との連絡窓口となる責任者です。法律で選任が義務付けられています。

これらの役割をきちんと分担し、契約の範囲内で適切な指揮命令を行うことが、トラブルを未然に防ぎ、偽装請負を避けるための鍵となります。

意外と知らない?派遣社員に任せてはいけない業務

先ほど少し触れましたが、労働者派遣法では、派遣社員に任せてはいけない業務が明確に定められています。
これらは専門性や安全性の観点から、派遣という働き方には適さないと判断されているものです。

  1. 港湾運送業務 港での船の荷物の積み下ろしなど。
  2. 建設業務 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊もしくは解体の作業またはこれらの準備の作業。
  3. 警備業務 施設やイベントなどでの警備。
  4. 医療関連業務 医師、歯科医師、薬剤師、看護師など。(一部例外あり)
  5. 士業 弁護士、社会保険労務士、税理士など、法律で特定の資格を持つ人しか行えない業務。
  6. 労使協議の使用者側の当事者として行う業務 人事労務管理のうち、団体交渉や労働基準法に規定する協定の締結などのための労使協議の際に使用者側の直接当事者として行う業務。

これらの業務を派遣社員に依頼してしまうと、法律違反となりますので十分注意してください。

派遣社員を受け入れる企業が守るべき7つのルール

法律で定められた禁止業務以外にも、派遣社員を受け入れる企業側が遵守すべきルールがあります。
これらを守ることで、無用なトラブルを防ぎ、派遣社員が能力を発揮しやすい環境を作ることができます。

  1. 派遣先管理台帳の作成と保管 派遣社員ごとに、就業日や業務内容などを記録した台帳を作成し、3年間保管する義務があります。
  2. 二重派遣の禁止 派遣されてきた社員を、さらに別の会社に派遣することは法律で固く禁じられています。
  3. 日雇い派遣の原則禁止 30日以内の短期契約での派遣は、原則として禁止されています。
  4. 離職後1年以内の派遣受け入れ禁止 自社を退職した人を、1年以内に派遣社員として受け入れることはできません。
  5. 契約外の業務をさせない 派遣契約で定めた業務以外の仕事をさせることはできません。時間外労働や休日出勤を依頼する場合も、事前に契約書への記載が必要です。
  6. 派遣社員を特定する行為の禁止 派遣先が派遣社員を指名したり、事前に面接を行ったりすることは、紹介予定派遣を除き禁止されています。
  7. 直接雇用への切り替え 派遣期間が終了した後、その派遣社員を直接雇用することを派遣会社が妨害することはできません。また、一定の条件を満たす場合は、企業側から直接雇用を申し込む努力義務も発生します。

もし派遣法に違反してしまったら?

万が一、労働者派遣法に違反してしまった場合、企業には厳しい罰則が科される可能性があります。
例えば、禁止業務に派遣社員を従事させたり、必要な許可なく派遣事業を行ったりした場合は、行政からの指導や改善命令が出されます。
悪質なケースでは、企業名が公表されたり、罰金が科されたりすることもあります。
「知らなかった」では済まされない問題ですので、法律のルールを正しく理解し、遵守することが非常に重要です。

まとめ

派遣社員を雇用することは、企業にとって多くのメリットがありますが、そのためには法律で定められたルールを正しく理解し、遵守することが大前提となります。
特に、派遣法と指揮命令系統のルールは、トラブルを未然に防ぎ、派遣社員と良好な関係を築く上で不可欠な知識です。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

  • 派遣の仕組みを理解する 雇用主は派遣会社、指揮命令者は派遣先企業であることを認識する。
  • 労働者派遣法を守る 期間制限(3年ルール)、同一労働同一賃金、禁止業務などの基本を必ず押さえる。
  • 指揮命令系統を明確にする 「指揮命令者」と「派遣先責任者」の役割を定め、現場の混乱を防ぐ。
  • 禁止事項を徹底する 契約外の業務指示や事前面接など、法律で禁止されている行為は行わない。

これらのポイントをしっかりと押さえ、派遣社員が安心してその能力を発揮できる環境を整えることが、結果的に企業の成長へと繋がっていきます。

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