宇宙へ行くAI、思考するAI、爆速のAI。すべてが加速した一週間【今週の必読AIニュース】

2026年2月第2週(2/8〜2/15)の生成AIニュース総まとめをお届けします。

今週は、AI業界の勢力図が大きく動いた、まさに「歴史的な転換点」とも言える一週間でした。

Googleは「人間の思考」を模倣し凌駕する推論能力を見せつけ、OpenAIは物理的なハードウェア(巨大チップ)と融合することで生物の反応速度を超える「爆速」を手に入れました。

そしてイーロン・マスクは、AIそのものを地球から「宇宙」へと持ち出そうというSFのような構想を実行に移し始めました。
単なる機能アップデートの枠を超え、人類のインフラそのものが根本から変わろうとしている――そんな強烈な予感させる今週のニュースを、詳細な背景解説と共に、4000文字を超えるボリュームで徹底解説していきます。

目次

Google Gemini 3 Deep Think ― 「人類最後の試験」を突破する思考力

Googleの最上位モデル「Gemini 3」に、新たな頭脳となる「Deep Think(ディープ・シンク)」モードが実装されました。

これは従来のチャットAIのように「確率的に正しい言葉を並べる」だけのマシンではありません。

「System 2(システム2)」と呼ばれる、人間のような「熟考・熟慮」のプロセスを行うための専用モードが搭載されたのです。

「System 1」と「System 2」の違いとは?

行動経済学の用語で、人間の思考には2つのモードがあると言われています。

  • System 1(直感): 「2+2は?」と聞かれて「4」と即答するような、高速で自動的な思考。
  • System 2(熟慮): 「17×24は?」と聞かれて筆算をするような、遅いが論理的で深い思考。
    これまでのChatGPTやGeminiは、基本的に「System 1」の超高速版でした。

    しかし今回のDeep Thinkモードは、ユーザーからの問いに対してすぐには答えません。

    内部で「思考の時間(Compute Time)」を確保し、複数の仮説を立て、脳内で検証と棄却を繰り返し、論理的な整合性が取れた段階で初めて回答を出力します。

    このプロセスは、まさに人間が複雑な数学の問題を解くときや、新しいビジネス企画を練るときの脳の動きそのものです。

3つの衝撃的なポイント

1. 「Humanity’s Last Exam」で世界記録 48.4%

現代のAIにとって最も過酷とされるベンチマークテスト「Humanity’s Last Exam(人類最後の試験)」において、Deep Thinkは48.4%というスコアを叩き出しました。

「半分も解けていないのか?」と思うかもしれませんが、これは驚異的な数字です。

従来の最高峰モデル(OpenAI o3ベースのDeep Research)のスコアが26.6%であったことを考えると、Deep Thinkはすべての競合を倍近いスコアで突き放したことになります。

この試験は、単なる知識の検索では解けない、高度な論理的結合力が試される問題ばかりです。

Deep Thinkの登場により、AIは文字通り、現時点での「人類最高到達点」の知能にまた一歩近づいたと言えます。

2. 未知の法則を見抜く力(ARC-AGI-2)

知識の暗記ではなく、未知のパターン法則を見抜く「ARC-AGI-2」テストにおいても、84.6%という驚異的な正答率を記録しました。

これまでのAIには「学習データにないことは答えられない」という弱点がありました。

しかしDeep Thinkは、初めて見る抽象的な図形パターンの法則性を、その場での推論だけで見抜くことができます。

これは、AIが「過去のデータの再構成」マシンから、「未知の解決策を生み出す」発明マシンへと進化している証拠です。

3. 科学オリンピック金メダル級の実力

物理、化学の国際オリンピック(IPhO, IChO 2025)の筆記試験において、金メダル相当の成績を達成しました。

複雑な物理現象のシミュレーションや、化学反応式の予測において、大学教授レベルの推論が可能になっています。

もはや「検索ツール」ではなく、研究者の「共同研究パートナー」として機能するレベルです。

活用イメージ:研究開発の現場が変わる

Deep Thinkは、研究職(R&D)やエンジニアにとって最強の相棒になります。

例えば、「新素材の実験結果が予測とずれた原因」を探る際、これまでのAIは一般的な教科書的な回答しかしませんでした。

しかしDeep Thinkは、実験データと数多の論文、そして物理法則を照らし合わせ、「Aという不純物が混入した可能性」や「Bという温度条件下での特異反応」といった、人間が見落としがちな仮説を深く考え抜いて提示してくれます。

「なぜ?」を突き詰める業務において、これほど頼もしい存在はありません。

OpenAI GPT-5.3-Codex Spark ― 1秒間に1000文字を生む「爆速」の衝撃

Googleが「じっくり考える」静的な方向に進化した一方で、OpenAIは正反対の「圧倒的なスピード」で勝負に出ました。

新モデル「GPT-5.3-Codex Spark」は、「AIチップの怪物」ことCerebras社のWSE-3(Wafer Scale Engine 3)で動く初の商用モデルです。

なぜ「チップの大きさ」が重要なのか?

通常、NVIDIAなどのAIチップ(GPU)は数センチ角のサイズで、これらを何千個もケーブルで繋いでスパコンを作ります。

しかし、チップとチップの間をデータが移動する際には、どうしても物理的な通信の遅延(レイテンシ)が発生します。

「光の速さ」ですら、AIの超高速思考にとってはボトルネックになっていたのです。
そこで登場したのが、Cerebras社のWSE-3です。

これは「シリコンウェハー1枚丸ごと(iPadくらいの大きさ)」を切り取らずにそのまま1つの巨大チップにしたものです。

4兆個ものトランジスタと、チップ上に直結された超高速メモリが一体化しており、通信の遅延が物理的に存在しません。

その結果、GPT-5.3-Codex Sparkは毎秒1000トークンを超える生成速度を実現しました。これは、人間が目で追うのすら不可能なスピードです。

3つのポイント

1. 「思考の速度」でコーディングする没入感

このモデルを使うと、プログラマーは「ゾーン(Flow State)」に入ったまま開発を続けられます。

これまでは「AIにコードを書いてもらい、待っている数秒間にスマホを見る」という隙間時間がありました。これにより集中力が途切れがちでした。

しかしSparkは、人間が「この関数を…」と思い浮かべてキーボードに手を置く前に、画面上にコードを完成させています。

「待ち時間ゼロ」の体験は、一度味わうと過去のモデルには戻れないほどの中毒性があります。

2. ポンコツなコードも一瞬で修正

「速いけれど、間違いも多いのでは?」と思うかもしれません。

確かに複雑な推論は苦手ですが、Sparkの真骨頂は「リカバリーの速さ」にあります。

もしAIが間違ったコードを書いても、人間が「あ、違う」と思うよりも速く、エラーログを読み取ってAI自身が修正版を提示してきます。

人間とAIが超高速でキャッチボールを繰り返すことで、結果的に完成までの時間は劇的に短縮されます。

3. 750メガワット規模の展開計画

OpenAIは2028年までに、このCerebrasのシステムを750MW分導入する計画です。

750メガワットと言えば、原子力発電所1基分に近い電力規模です。

OpenAIが、単なるソフトウェア企業から、独自のハードウェアインフラを持つ巨大テック企業へと脱皮しようとしていることがわかります。

注意点:使い分けのセンスが問われる

速度に全振りしているため、複雑な論理パズルや、大規模なシステム設計の能力(SWE-Benchなどのスコア)は、通常版のGPT-5.3に劣ります。
「難しい設計やアーキテクチャはGemini 3 Deep Thinkに相談し、実際の実装コードはGPT-5.3 Sparkで爆速出力する」というように、AIモデルの適材適所を人間が指揮する能力が求められるようになります。

Anthropic Claude in Excel ― 誰もが「データサイエンティスト」になる日

地味ながら、ビジネス現場への即効性とインパクトが最も大きいのがこのニュースです。

Anthropic社のClaudeが、Microsoft Excelとの統合をさらに深め、2月のアップデートで実用レベルに達しました。

Excelが「言葉」を理解する衝撃

これまでのExcel連携機能は、せいぜい「関数の書き方を教えてくれる」程度のものでした。

しかし今回のアップデートで、ClaudeはExcelの中身(セル、シート、データ構造)を直接見て、理解し、操作できるようになりました。

これは、あなたの隣に「Excelオタクの超優秀なアシスタント」が座っているのと同じです。

ビジネスを変える3つの機能

1. 非構造化データの「感情分析」

例えば、アンケート結果が大量に入ったExcelファイルがあるとします。

C列には顧客からの自由記述のコメントが並んでいます。

これまでは人間が一つ一つ読んで分類していましたが、Claudeに「C列を読んで、クレームやネガティブな意見だけを赤色でハイライトして。ついでに隣のD列に『接客』『商品』『価格』のカテゴリ分類を入力しておいて」と指示すれば、数秒で完了します。

数式では不可能だった「意味の理解」をExcelの中で行えるのです。

2. ピボットテーブルの自動生成

「地域ごとの売上推移が見たいけれど、ピボットテーブルの設定が面倒くさい…」

そんな時も、「地域別と月別の売上表を作って」とチャットするだけで、適切な行・列・値を設定したピボットテーブルと、見やすいグラフが一瞬で作られます。

データの可視化にかかるコストがほぼゼロになります。

3. 金融・経理業務への特化(Financial Analysis)

今回のアップデートは特に金融のプロ(Financial Professionals)を意識してチューニングされています。

決算書の分析や、複雑な予実管理表の作成など、企業の意思決定に関わる重要な表計算作業において、高い精度を発揮します。
経理担当者が「この数字、どこのシートから来てるんだっけ?」と迷子になる時間を、Claudeが大幅に削減してくれるでしょう。

SpaceX × xAI ― AIは「宇宙」へ逃げる

最後に、今週最もスケールの大きい、そして未来を暗示するニュースを紹介します。

イーロン・マスク率いるSpaceXが、同じくマスク氏のAI企業であるxAIを1.25兆ドル(約180兆円)という巨額で買収・合併しました。

なぜ宇宙開発企業がAIを?

この合併の目的は、単なる資金調達や企業価値の向上ではありません。

真の狙いは「Orbital Compute(軌道上計算基盤)」の構築です。
現在、地上のAIデータセンターは深刻な「エネルギー危機」に直面しています。

AIの学習と推論には莫大な電力が必要であり、さらにチップを冷やすための冷却水も大量に消費します。

地球上の電力網と環境負荷が、AIの進化を止めるボトルネックになりつつあるのです。

「空にあるデータセンター」構想

そこで彼らが考えたのが、「宇宙なら太陽光(電力)は無限、冷却も宇宙空間への排熱(絶対零度に近い環境)で容易」という発想です。

SpaceXは、将来的に100万基のデータセンター衛星を打ち上げ、Starlinkの光通信網でつなぐ計画を発表しました。
私たちがスマホでAIを使うとき、その計算処理は地上のサーバーではなく、夜空に浮かぶ衛星の中で行われる。

そしてその結果が、レーザー通信で一瞬にして地上に降りてくる。

空を見上げれば、そこにある無数の星々(衛星)が、人類の第2の脳として機能している。
そんなSFのような未来が、2026年の今、現実のロードマップとしてカネと技術が動き出しています。

2026年前半の展望:Metaの「アボカド」と「マンゴー」

この激動の中、沈黙を守っているMeta(Facebook)ですが、水面下では着々と準備を進めています。

噂されている次世代モデルのコードネームは「Avocado(アボカド)」と「Mango(マンゴー)」です。

  • Avocado: Llama 4世代の推論・コーディング特化モデル(おそらGoogleのDeep Think対抗)
  • Mango: 高度な画像・動画生成可能なマルチモーダルモデル
    これらは2026年前半のリリースが予想されています。

    Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは、「AIはオープンであるべきだ」という信念のもと、これらの強力なモデルをオープンソース(またはそれに近い形)で公開する可能性があります。

    「閉じられた最高性能(Gemini/GPT/Claude)」vs「開かれた民主的AI(Llama)」の戦いは、今年もさらに激化していくでしょう。

まとめ:私たちはどう生きるべきか

今週のニュースを振り返ると、AIの進化が「質(Deep Think)」「量・速度(Spark/Orbital Compute)」の両極端に振り切れたことがわかります。

私たちは今、目的に応じて「熟考する天才AI」と「反射神経の良い爆速AI」を使い分ける贅沢な時代に生きています。

  • じっくり深く考えたいなら、Gemini 3 Deep Think。
  • 爆速で試行錯誤したいなら、GPT-5.3-Codex Spark。
  • 日々の泥臭い業務を楽にするなら、Claude in Excel。
    あなたの今の仕事は、どのAIと相性が良さそうですか?

    すべてを一つのAIに任せるのではなく、それぞれの特性を理解し、指揮者(コンダクター)のようにAIチームを使いこなす能力。
    それこそが、2026年を生き抜くための最も重要なスキルになるでしょう。

参考サイト

Google Gemini 3 Deep Think

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