「システム障害について調べてみたら、SLA、RTO、RPOなど、よく知らない用語ばかりで読む手が止まった……」
会議で説明を聞いても、英字の略語が続くと関係をつかみにくいですよね。
どれもサービスの停止に関わる言葉ですが、答えている疑問は違います。
この記事では、同じ受注システムの例を使って、3つの意味と違いを整理します。
読み終えるころには、復旧計画やサービスの説明書で、どの数字を確かめればよいか分かります。
まずは結論から
SLAはサービス品質についての合意、RTOは復旧までの目標時間、RPOは復旧するデータの時点に関する目標です。
まずは、次の3つの問いに置き換えてみてください。
- SLAは「提供側と利用側で、どんなサービス品質を約束しているか」。
- RTOは「止まってから、何時間以内に再開することを目指すか」。
- RPOは「データは、障害の何分・何時間前の状態まで戻せればよいか」。
RTOとRPOは、守りたい仕事から決める目標です。
それらがSLAに盛り込まれることもありますが、稼働率だけが書かれたSLAから、復旧時間やデータの新しさは分かりません。
以下では、まずBCPとのつながりから見ていきましょう。
BCPと3つの用語のつながり
BCP(ビーシーピー)は「事業継続計画」のことです。
災害や大きな障害が起きても、大事な仕事を続けたり、早く再開したりするための計画を指します。
英語ではBusiness Continuity Planといいます。
たとえば、受注用のシステムが止まった場合を考えてみてください。
パソコンを直すだけでなく、電話で注文を受ける方法、担当者への連絡、発送の優先順位も決めておく必要があります。
BCPが扱うのは、こうした仕事全体の備えです。
その中で「何時間以内に受注を再開するか」を決めるのがRTO。
「注文データはどこまで残す必要があるか」を決めるのがRPOです。
外部のサービスを利用するなら、提供側との約束であるSLAも照らし合わせます。
仕事の再開を引っ越しにたとえると、BCPは引っ越し全体の段取りです。
RTOは新しい場所で仕事を始めるまでの時間、RPOは持っていける帳簿の新しさに当たります。
SLAは、手伝ってくれる業者との間で取り決めたサービス内容と考えると、関係が見えます。
事業を続けるために、優先する仕事と復旧の目標を決める考え方は、中小企業庁のBCP解説でも示されています。
※ 中小企業庁は、中小企業の経営を支援する国の機関です。
リンク先は、同庁のBCP策定運用指針に含まれる公式解説です。
RTOとRPOの意味をつかむ時間軸
どちらも時間で表すので、ここが最も混同しやすいところです。
RTOは障害が起きた後、RPOは障害が起きる前のデータに目を向けると区別できます。
RTOは「何時間以内に再開するか」
RTO(アールティーオー)はRecovery Time Objectiveの略で、日本語では「目標復旧時間」です。
システムや業務が止まってから、定めた状態まで復旧するための目標時間を指します。
13時に受注システムが止まり、RTOを4時間と決めていたとします。
この場合、17時までに再開することが目標です。
「担当者が作業を始めてから4時間」ではなく、ここでは停止した13時を起点に考えます。
復旧とは、必ずしも全機能が元どおりになることではありません。
「注文の登録と確認ができる」など、必要な状態を先に決めます。
画面が開いても注文を保存できなければ、受注の仕事は再開できませんよね。
RTOは実績や保証された所要時間ではなく、達成するために準備する目標です。
実際に再開まで5時間かかったなら、RTO4時間という目標を超えています。
復旧作業だけでなく、障害への気付き、連絡、動作確認の時間も見込む必要があります。
RPOは「どの時点のデータまで守るか」
RPO(アールピーオー)はRecovery Point Objectiveの略で、日本語では「目標復旧時点」です。
障害から復旧したとき、どの時点までのデータを取り戻せる必要があるかを決めます。
データが失われる可能性のある範囲を、時間で表す目標です。
同じ13時の障害で、RPOを1時間とします。
この場合は、12時時点までのデータを取り戻せることが目標です。
12時から13時までの注文は、復元したデータに含まれない可能性があります。
「1時間分なら失っても影響がない」という意味ではありません。
注文メールなどから入力し直せるか、顧客への確認が必要かも含め、仕事として対応できる範囲を決めます。
実際に失うデータが必ず1時間分になるわけでもありません。

図の例では、再開する時刻の目標が17時、守るデータの時点が12時です。
RTOを短くすることと、RPOを短くすることは別の課題だと分かります。
RTO・RPOの定義は、AWSの復旧目標に関する公式技術文書でも確認できます。
※ AWSは、Amazonの提供するサーバーやデータ保存などの機能をインターネット経由で提供するクラウドサービスです。
リンク先は、システムの設計・運用を考えるための提供元の技術文書です。
バックアップの頻度だけでは決まらないRPO
バックアップとは、失ったデータを戻すため、別にコピーを保存しておくことです。
RPO1時間を目指すなら、1日1回のバックアップだけでは、日中の障害に対応できません。
ただし、1時間ごとの取得設定があれば十分、ともいえません。
取得の失敗、保存先への転送の遅れ、コピーの破損によって、使えるデータが古くなる場合があります。
確認するのは設定した間隔に加え、実際に戻せるデータの時点です。
バックアップの方式そのものが分からない場合は、種類の違いを先に押さえると、担当者の説明も読みやすくなります。

SLAの意味と稼働率の読み方
SLA(エスエルエー)はService Level Agreementの略で、「サービスレベル合意」と呼ばれます。
サービスを提供する側と利用する側が、品質や責任の範囲を取り決めたものです。
RTO・RPOが目標となる指標なのに対し、SLAは指標や条件を含む合意そのものです。
たとえば「月間稼働率99.9%」や「重大な障害の問い合わせには1時間以内に最初の返答をする」といった項目があります。
ここでの稼働率は、対象期間のうちサービスを利用できる時間の割合です。
すべてのSLAに、同じ項目が入るわけではありません。
最初の返答が1時間以内でも、復旧が1時間以内とは限りません。
「連絡を受けたことを知らせる」「調査を始める」「使える状態に直す」は、それぞれ別の段階だからです。
数字を読むときは、何を終えるまでの時間なのかも一緒に見てください。
稼働率99.9%と「約43分」の関係
30日間を24時間ずっと測り、停止時間だけで単純計算すると、99.9%に対応する停止時間は約43.2分です。
計算は「30日×24時間×60分×0.1%」となります。
これは期間全体の割合を時間へ置き換えた値です。
「1回の障害が43.2分以内に直る」というRTOの約束にはなりません。
実際のSLAでは、停止と数える条件や対象外の事象なども確認しましょう。
仕組みとしての稼働率や、複数の機器を組み合わせた場合の計算は、次の記事で確認できます。

SLA未達時の対応まで含めた確認
SLAがあるからといって、障害が起きないわけではありません。
また、基準を満たさなかった場合も、利用者の損失がすべて補われるとは限らない点に注意が必要です。
たとえば、Amazon RDSのSLAでは、所定の条件で、利用料金に充てるサービスクレジットを申請する仕組みが定められています。
確認するのは数字だけでなく、適用条件、申請方法、期限までです。
※ Amazon RDSは、AWSのデータベース運用サービスです。
データベースは、注文情報などを整理して保存・検索する仕組みを指します。
リンク先は提供元の公式SLAで、条件の詳細は契約時の最新文書を確認してください。
ここまでの違いを、資料を読むときの問いで整理します。
| 用語 | 確かめること | この記事の説明例 |
|---|---|---|
| SLA | どの品質・条件を提供側と合意しているか | 月間稼働率99.9%など |
| RTO | 停止後、いつまでに再開する目標か | 13時に停止し、17時までの再開を目指す |
| RPO | どの時点までのデータを守る目標か | 13時の障害に対し、12時時点までのデータを守る |
SLAは約束の内容を読むもの、RTOとRPOは必要な復旧の水準を考えるものです。
3つを照らし合わせると、利用するサービスで自分たちの仕事を守れるか、確認しやすくなります。
仕事に合う復旧目標の決め方
「結局、何時間にすればよいの?」と迷ったら、システムの性能表より、止まったときの仕事を先に見ます。
RTO・RPOに、すべての会社で使える正解の数字はありません。
次の順で担当者と整理すると、必要な備えを話し合いやすくなります。
- 守る仕事を一つ選ぶ。
受注、出荷、給与計算など、止まると困る仕事を具体的にします。 - 停止とデータ消失の影響を分ける。
何時間止まると出荷に間に合わないか、何時間分なら別の記録から補えるかを確認します。 - 目標とサービスの条件を照合する。
再開に必要な機能を決め、SLA、バックアップ対象、復旧を担当する範囲を確かめます。 - 実際に戻して測る。
決めた時点のデータが使えるか、必要な仕事を目標時間内に再開できるかを試します。

たとえば「4時間で再開したいのに、データの復元だけで5時間かかる」と分かれば、今の方法では足りません。
予備の環境や手順を見直すほか、電話受付などの代わりの方法も考えられます。
すべてをゼロに近づけるより、仕事への影響と費用を一緒に比べることが大切です。
試験では、元のデータを上書きしない別の場所や検証用の環境を使いましょう。
ファイルが戻ったことだけで終わらせず、開けるか、注文を登録できるかまで確認します。
AWSの復旧テストに関する公式技術文書も、データの状態と復旧にかかる時間を確かめる考え方を示しています。
よくある質問
- RTOとRPOの覚え方はありますか?
RTOのTをTime(時間)、RPOのPをPoint(時点)と結び付けると整理できます。前者は「再開までの時間」、後者は「戻したいデータの時点」です。 - BCPとDRはどう違いますか?
DRはディザスタリカバリの略で、災害などで使えなくなったITシステムを復旧するための備えです。人員や取引先との連絡、代わりの仕事の進め方も含むBCPの中で、ITの復旧を支えます。 - RPOがゼロならバックアップは不要ですか?
不要にはなりません。データを別の環境へ即座に複製していても、誤削除や破損まで反映される可能性があります。過去の正常な状態へ戻す備えも別に考えます。 - クラウドを使えば自社の復旧計画はいりませんか?
必要です。提供側が戻す範囲と、自社が担当するデータ保護や設定の復旧を確かめます。社内の通信が使えない場合や、担当者が不在の場合も想定しておきます。
まとめ
BCPの資料に出てくる英字は、仕事を守るための問いに置き換えると読みやすくなります。
押さえる要点は次の3つです。
- SLAはサービス品質と条件についての合意です。数字の対象と、基準を満たさないときの対応も読みます。
- RTOは停止してから再開までの目標時間です。何ができれば再開とするかも決めます。
- RPOは復旧するデータの時点に関する目標です。実際に戻せるコピーがあるか確認します。
まずは身近な仕事を一つ選び、「何時間止まると困るか」「何時間分のデータなら補えるか」を書き出してみましょう。

